まだまにあうのなら――私の書いたいちばん長い手紙――私は福岡市から車で西へ30分程度の前原市に住んでいます。そこには海と山に囲まれたのどかな田園風景が広がっています。毎日犬の散歩で田んぼのあぜ道や山道や川の土手を歩きながら日々変化する山や野の風景を楽しみながら、どうかこの美しい自然との共生が永遠に続きますようにと祈らずにはいられません。 この作品の背景はこの集落の田植え直後の田んぼの景色です。使ったテキストは近所に住むお寺のご住職のお連れ合いで、二児の母でもある甘蔗珠恵子(かんしゃたえこ)さんが、1986年のチェルノブイリ原発事故にショックを受けてそれまでほとんど知らなかった原子力発電所についての勉強をものすごい勢いで始めて、その実態を知れば知るほど隠されている恐ろしい事実を黙っていることができなくなり、友人にあてて長い長い手紙を書きました。その手紙が一冊の本となったものです。 この美しい里山も近くにある原発の事故が起こればもう生き物の住めない土地となってしまいます。現在日本国内に原発は55基あり、日本は世界でも有数の原発保有国です。なんとか原発に頼らなくてもいい生活を模索したい、何百年何千年もの間自然と人間が共存してきた美しい営みを失いたくないという気持ちでこの作品を書きました。
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